名著を読む17 – カレル・チャペック『絶対製造工場』

◇ 「絶対」を「製造」する「工場」

 「あれがただのガスだったらなあ」マレクは拳を固めて怒りを爆発させた。「いいか、ボンディ、だからぼくはあのカルブラートルを売っ払わなけりゃならないんだ! ただただ、ぼくはあれに耐えられない、耐えられない、耐えられないんだよ!」マレクはほとんど泣かんばかりに叫んだ。「ぼくは、ぼくのカルブラートルがこんなことをしでかすとは予想もしなかった。こんな--恐ろしい--悪さを! 考えてもみろよ、これにぼくは最初から引きずりまわされているんだ! あれに近づく人は誰でも、それを感じる。きみはまだなにも知らないんだ、ボンディ。だが、僕の家の管理人はすでにあれの報いを受けた」
 「それはかわいそうに」社長さんは同情しながらいぶかった。「あれのために死んだのかい?」
 「いや、回心して人が変わったんだ」マレクは絶望的に叫んだ。
(出典)カレル・チャペック(飯島周訳)『絶対製造工場』平凡社ライブラリー、2010年、31-32頁。

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