政教分離? いいえ、政教分立です。

一つの国に一つのマジョリティの宗教が存在する場合、イスラム諸国もそうですが、そこに民主主義をどうすり合わせるか?
それはとても重要かつ困難な課題だと思います。

ヨーロッパの歴史は宗教と政治が絡み合い依存し合い、又は権力の争いの歴史であったといっても過言ではありません。
皇帝派、教皇派とお聞きになったことあると思います。戦争ばっかりして、どっちが偉いんや?って突っ込みたくなりますよね。

 

そこで、ようやく産み落とされた基本原則が、
国家(政治)の「非宗教性」(laicità)です。

ここで大事なのはイタリアの場合「非宗教」(laico)は「無宗教」(ateo)とは違うという事です。

例えば、かのダンテ・アリギエーリは世俗の人(laico)で政治家で詩人、しかし『神曲』からも明らかなようにキリスト教の敬虔な信仰者でした。無宗教者ではありません。
彼の信仰は理性とも両立しました。

ダンテは当時の教皇ボニファティウス八世がフィレンツェの政治に介入しようとしたとき断固抗議しました。
政治と宗教との立て分けを明確にしました。

 

イタリアではカトリック教は国民の生活とは切っても切れない。
隅々まで影響を及ぼしています。文化やメンタリティを形づくっています。

国の祝祭日の大半はカトリック教のものです。
公立学校でも宗教の授業があります。
イタリア人の精神的基盤です。無しにすることは出来ません。

日本人にそんな精神的基盤ってありますか?

さてここからです。

イタリア共和国憲法(イタリア共和国上院国際部による翻訳)

『第7条

国家とカトリック教会は,それぞれの体制において独
立であり最高主権を持つ。
Lo Stato e la Chiesa cattolica sono, ciascuno nel proprio ordine, indipendenti e sovrani.

両者の関係は,*ラテラノ協定により規定する。両者が
同意したラテラノ協定の改正は,憲法改正の手続きを必
要としない。』

*ラテラノ協定
1929年教皇庁のあるヴァチカン一帯が「ヴァチカン市国」としてイタリア政府から政治的に独立した区域となることが認められた。イタリア政府は教皇庁に対し、対外的に永世中立であることと、イタリア国内の政党間の争いにおいて特定の政党に与しないことを求めた。
1984年にはラテラノ条約の改定が行われ、カトリック教会が国家に承認された特別な宗教であるという旨の部分が削除された。(カトリック教会は国教ではないということです。)

イタリア語もよく見ていきたいので最初の二行だけ原文を引っ付けました。

主語は国家とカトリック教会の二つです。
両方がそれぞれの統治機構・体制(組織)を持って存在しています。
それぞれは独立しています。依存したり混同してはならないということです。
つまり、カトリック教会の規範と国の規範は、秤に乗せて同じ重さなのです。

私はカトリックはようわからんけど、世間の常識で生きていくっていう人がいてもいいわけです。どっちが上とか下とかではないのです。

そして(sovrani)という言葉ですが、これ以上に上はないという意味です。
私は「至高」という訳をつけたいと思います。
国も宗教もそれぞれが至高の存在だということです。
どちらの権利も侵されないのです。尊厳性です。
この条文を起草した人の誇りを感じます。

 

フランシスコ法王は難民問題や貧困問題等々、発言だけでなく行動されていますが、それは政治的というより、社会に開かれた宗教のトップとして当然の行動です。(一応法王はヴァチカン市国の国主でもありますが、その話は今は横に置いておきます。)

信仰による倫理観、人間を尊ぶ精神で政治を監視し、意見を反映させる。
しかしそこに宗教的権力を介入させることは出来ません。

多くの人々の信仰を集める聖職者がある特定の政党の投票を呼びかけることはあってはならない。権力の介入になります。

宗教は個人の精神的支柱となるもので、個人の内面の一番奥に位置するものです。大変にデリケートな部分です。であるからこそ、そこに神の名を騙って政治誘導することは大きな禍を招きます。

周りの何人かのイタリア人の友人にも、もしも…宗教団体がある特定の政党を応援するとすれば…どう思うか、尋ねてみました。
全員が「あり得ない」との答えでした。
少なくともイタリアではそうです。

 

 

日本の政教分離とは少し雰囲気が違うかもしれませんね。

次回は憲法第8条、カトリック教以外の宗教の自由と宗教協約(インテーサ)について言及したいと思います。

 

 

 

写真は、いつも行くお魚屋さんの壁。
マリア様や聖人のブロマイド的なもの、店の営業許可証、子供の写真が一緒にペタペタ貼ってあります。同じ一線上にあるんだなぁと思います。

執筆者プロフィール

セラフィーニ まり
セラフィーニ まり
イタリア在住30年。
専門はイタリア中世・ルネサンス美術。
イタリア建築、特に教会建築に興味があり、詳細に観察し写真に撮るのが趣味。
いい加減だけど心優しい人達に囲まれてイタリアの片隅から、世界と日本を眺めています。

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