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2045 #11 - 地図 | すたぽ-Starting Point-
横浜に帰ってくるとセイキは、その道すがら考え練ったアイデアをかたちにする作業に取り掛かる。そのとき彼がイメージしていたのは、広島の悲劇を共感できるツールを用意することであった。では、それは一体何なのか。 原爆資料館の展示やその内容を収めた図録の掲載には、ウラン型原子爆弾"リトルボーイ"の投下によって広島の街が崩壊した被害規模が記録されていた。 投下直後に発生した人工の太陽とも比喩できる"火球"が直径600m。それがみるみる膨らみながら上昇する中で、街の上空にあの大きなキノコ雲が噴き上がった。その噴煙に隠れた下界の地上では、爆心地から半径2.5km圏が火の海となり建物は全焼全壊。更に半径2.75km圏では火の巡りには地域差があったものの爆風の影響で建物は全壊。更に半径5km圏と沿岸部広域では爆心地から轟いた衝撃波や爆風によって建物は半壊したとされる。 これらの影響により、広島では1945年の末までに約14万人が亡くなり、生き残った多くの市民も被爆症を背負いながら戦後の困窮に直面した。しかし、ひとつの街が崩落したこれらの現象は、たった1発の爆弾にあらゆる地獄が凝縮されていた結果であった。 けれども、例えばこれらの脅威を地元の友に話したとしても、まったく理解できない訳ではないにしても、その意思疎通がを100%適うようには思えなかった。広島の街の被害規模を語ろうにも、過去に居住していたり仕事や旅行などでその現地に行った経験がないと、土地勘のない人々にとっては遠い世界の話にしか聞こえないかもしれない。 そこで、その広島の悲劇をぐっと身近に理解できる為の方法として、セイキは羅針盤となるMAPを作成することにした。それは、原爆投下によってもたらされた広島の街の被害スケールを、自分が住む横浜の地図上に投影を試みるというトンデモない発想であった。 彼は過去にWEBディレクターの仕事を経験する中で、顧客サイトに会社や店舗の場所を示すGoogleMAPの投影を実施した経験があった事から、今回のニーズに合致するフリーツールが探せばあるかもしれないと思った。WEBを検索すると、その予感は的中した。 (※当時はGoogleMAPを加工したツールであったが、現在でも下記URLからアクセスする事が可能[2019年9月現在])。