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【無料】#12 - ライセンス | すたぽ-Starting Point-
こうしてWEB上のフリーツールを用いて目的に適った円状デザインを地図上に描き出す手段を見出したセイキは、次のステップに進む。幸いにして彼は、心許せる仲間のひとりであったデザイナー職人のセンパイが居たことから、自身の構想を打ち明けてビジュアルデザインの制作協力を無償で賜る機会を得ていた。三重奏の円を描写したフリーツールMAPと同倍率の地図画像を用意することにより、その円形をトレースすれば広島の原爆被害規模を現在の都市に投影できる公算であった。その為にも先ずは、軸となる広島の地図を完成させなければならない。 しかし、ここで最初の難関に直面する。セイキは学生時代、芸術大学で表現技法を学ぶ中で著作権のもつ社会的仕組みについて強く惹かれる機会があった。出席日数が至らず結局その講義の単位を修得する事はなかったものの、作品表現後に発生するライセンスを保有する事で得られる経済的恩恵やポリシーの構造に関心を寄せてまじまじと眺めていた。当時のキャンパスでは表現の自由ばかりを謳歌し追い求める青臭い学友が大多数だった中で、将来何者になるかも判別のつかない内から価値表現の発信に伴う表現者としての"責任感"について考察を深めたいと試みる一風変わった芸大生でもあった。そうした現実性と向き合う姿勢の中で、それはいっそう興味深く映ったのであった。 …幾星霜を経て物語はまた現代に戻る。 こうした経緯からライセンス絡みにこと敏感なアンテナを張り巡らし、サイト作成に活かせるフリーツールを探し集める中で彼は思い知らされるのであった。 「…地図にも著作権あるのかよ」 これは意外な盲点だった。絵画や写真といった個人表現のまさに対極に位置する、むしろ日用的な公共アイテムとしての印象すら色濃い、あの地図にも著作権は存在していたのである。 WEBを開けば常にいつでも閲覧できる精度の高いGoogle Mapをこのとき使用候補に挙げていたものの、サイトポリシーを確認すると大手地図会社がライセンスに関与していた事や無断の転載使用が確かに禁止されていた。 企画は一旦暗礁に乗り上げるかに見られたが、セイキが助けを得たのはスティーブ・ジョブズ(1955