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Salt33 – 僕を他人の名前で呼ばないでください

今、日本でも、「旧優性保護法」によって、1996年まで、障がい者に対して行われていた不妊手術強制の問題が、やっと多くの人に知られるようになってきました。

障がいがある(時には、そうらしいという推測だけで)かたがたに、数字を国に報告するために、自治体が競って、妊娠しない手術を受けさせた重い事実。しかも、県によっては、9歳とかの子どもたちに対する手術が過半数とかいう、尋常ではない事実も。

実は、知り合いにも複数います。
ハンセン回復者の生活のお手伝いをしているので、ワゼクトミーという手術を受けたハンセン回復者何人か知り合いなのです。

ハンセン病、また知的、身体、精神の三障がいのかたがたは、それだけでも、生きていくために、大変なのに、さらに、それを「罰する」ように、より過酷な状態にさらしたわけです。

ちょっと、この問題について、違う角度から考えたいと思います。

 

発達障がいの一つに名を残すハンス・アスペルガー医師。

最近の研究で、彼は、ナチス・ドイツに協力して、「民族浄化プログラム」「障がい者安楽死プログラム」、そして、

 

「障がい」や「民族的純粋性」に問題のある子どもたちを「安楽死」させるプログラムに協力していたことが明らかにされてきました。

そして、その見返りとして、職と地位にありついた。

かれは、子どもたちを、悪名高い医療施設、Spiegelgrundにおくりました。

 

ここでは、「障がい」や「民族的純粋性」に「問題がある」とされた子どもたち数百人が「安楽死」させられたところです。

 

https://molecularautism.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13229-018-0208-6

 

確かに、「アスペルガー」という名前が日本社会に浸透していくことによって、「ああ、この人が『空気読まれへん』のは、障がいなんやな。怖い、へんな人じゃないんやな」という、認識が少しは広まったかもしれません。

事実、私の知り合いにも、それでほっとした、という、いわゆる”アスペルガー”のかたもいます。

事実、アスペルガー医師の旧悪が露見することによって、

アスペルガー医師が悪→アスペルガーの人も悪

みたいな短絡的イメージを持たれたらえらいことですから。それを懸念する人も多いのです。

これを機会に、「精神分裂病」→「統合失調症」みたいに、認知度も高くなりとともに、「あー、困ってはるねんな」と言う認知も広がっていく名前が生まれたらいいなと思います。

いや、それよりもっと根本的には、どんな障がいを持っていても、普通に暮らせる社会になっていったらいいのでしょう。

「ハンセン病」も、病因を発見した、ノルウェーの医師アルマウェル・ハンセンの名前に因んでつけられました。
しかし、彼は、ハンセン病患者の支援に、それこそ命がけの奮闘をしました。だから、その名がついていても、アスペルガー医師の場合とは違うとは思います。

でも、知り合いのハンセン回復者のかた(在日韓国籍のかたです)が語ってくれた、こんなことばがあります。

「僕には親が付けてくれた名前があるのに、日本社会では通名で生きていかねばならなかったし、園では、まず『患者番号』で呼ばれ、それから『園名』で呼ばれた。
そして、治っても『ハンセン病』と指さされる。いくら有名ないいお医者さんでも、僕は他人の名前で呼ばれたくないよね。親が付けてくれた名前で呼んで欲しいよね」

画像は、国立療養所栗生楽泉園(群馬県)にあった、重監房の跡。医療施設に、牢屋があったんです。ここで多くの入所者が、栄養失調や凍死で亡くなりました。いや「殺され」ました。

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