ドイツ在住のキャリア女性たちとお茶をした。そして、好きな芸能人の話になった。
あらためて考えてみた。テレビを見るのが嫌いな私でも、この人がしゃべるとつい、見入ってしまう人がいる。
たとえば、ジャパネットたかたのテレビショッピングで、少しキーの高い声で商品説明をする、創業者の高田明だ。
実は、彼がテレビに出てきたときからなんとなく好きだった。その理由は、「一生懸命に商売をしていた」から。しかも、まったく都会的ではなく、田舎のおっちゃんという感じもすこぶるよくて、年齢不詳だったのも魅力的だった。同じものでも、彼が説明をすると商品が全く違って見えたし、なにより自分が勧める商品に対する愛情が感じられた。こんな人に営業してもらったら、作った人たちは嬉しいだろうなぁ、と。
あとで知ったが、彼も企業人として1972年から約2年間、ドイツのデュッセルドルフに海外赴任していたという。
もうひとりは、さかなクンだ。
いまは魚類学者と言ったほうがいいのだろうか。彼を見ていると、そのひたむきさに泣けてくる。今年に入って、彼を中傷する書き込みが続き、自身のフェイスブックで「辛いですが真摯に受け止めます もっと落ち着いて、頑張って生きたいと存じます どうか、よろしくお願い致します 悩みすぎたら熱が出た もう、休もう お休みなさいませ」と書いた。もちろん、その後応援のメッセージも届き、なんとか感情を維持しているらしい。
好きなものに打ち込んで、そして、その分野の専門家として社会も求めざるを得ないほどの実力をつけ、しかも誰に対しても変わらず「ギョギョ」とサカナ語を話す。好きだなぁ、と見るたびに思う。
で、ドイツで働く女たちのイチオシが、玉置浩二だった。しかも、玉置浩二にハマると短くても数日間、長いと数ヶ月、朝から晩までユーチューブでその歌声に浸ってしまうという。
これには、正直驚いた。
かつて「安全地帯」というグループのボーカルだったことは知っていたが、その後のことは全く知らない。
同席していた友人らが「見て、見て」と動画を再生してくれた。特に香港公演の「行かないで」は、再生回数が200万回を超えている。
また、その歌唱力の素晴らしさにも驚いた。以前よりも数段上手になっている、というと申し訳ないが、歳を重ねてこんなに歌が素敵になった人を見たことがない。
そして、顔がいい。
嫌な政治家の顔ばかり見せられてきたせいか、こんなふうに素敵な顔になる歳のとり方があるのだなぁと、しみじみ思った。
最後に、人気急上昇なのが吉川晃司だという。
えええ?という私の驚きを尻目に、いい顔になったともっぱらの評判だ。
しかし、吉川晃司といえば「モニカ」しか思い浮かばない。どことなくエロチックな少年だったが、これも動画を見せられて、おおお、と感動した。イタリアなどで見かける「絵になる男」になっていたのだ。
ちなみに彼は、「俺は現政権がでえっ嫌い」と、反安倍の姿勢を貫いている、まさにロッカーだ。
かつてフォークをやっていた連中がほぼ全滅した中で、こうやって本物は生き残るんだなぁ、と、しみじみ思った。
ドイツに来てよかったことは、余計な日本語が聞こえてこないこと。そして、ドイツの友人たちと出会えて、日本の外では良質なものがちゃんと選ばれてるんだなぁと思ったこと。
いい顔で歳を重ねたいな。
(マスコミ市民’18年7月号より転載)
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