パンツを嗅げ、か?

ドイツ人との国際結婚で一番面白かったエピソードは、自分の意見を言った妻(日本人)に対して夫(ドイツ人)が、「俺は日本人の女と結婚したのに…」と言ったこと。

他にも、米国人の夫からこのドイツ男とほぼ同じことを言われて日本に戻ってきた友人がいる。

彼女は「日本人の女と結婚したのに、どうしてこんなに家のことを(俺が)しなくちゃならないんだ」と言われてハッとしたと言う。この人は私とではなく、「日本人の女」というメイドと結婚したかったんだと思ったら、馬鹿らしくなったと。

日本のジェンダー平等指数が世界149カ国中110位と発表されれば、誰でも男性天国社会と考えてしまうのは無理からぬものがある。

で、やっとのことで離婚したこの友人は、もう男なんかこりごりと言って、事業を立ち上げ仕事に爆走しているのに対して、前夫はさっさと韓国人女性と再婚したと言うから爆笑してしまった。

あまりにも良くあるパターン。

日本人女性との離別後に韓国人やベトナム人の女性と結婚する西洋の男は少なくない。(アジア人女性でなければポーランド人がそこにくる。)

アジア人女性は従順だというステレオタイプだけでなく、経済力のある国で生まれた男は、魅力がなくても「金」があればパートナーをいつでも探すことができるということの証明だろう。それは、女性が生産の現場から排除されていることと表裏一体だ。

この手の男の多くは、相手が変わればうまくいくと思っていて、自分が変わろうとは決してしない。そして、より都合のいい女性を求めて、懲りもせず結婚を繰り返す。

で、アジア人女性を侮蔑したCMとして最近大炎上しているのが、ドイツのホルンバッハ(ホームセンターを経営する企業)のCMだ。実は、抗議の署名用紙がケルンから送られてきて初めて知った。

このCMのタイトルは「春の香りはいかが?」なのだが、見終わっても、この企業がコマーシャルとして何を言いたいのか、まったく分からなかった。

CMでは、体格のいい三人の白人男性が土を掘り起こすなどの肉体労働をしているところに研究者らしい白衣姿の白人男性が来て、彼らのパンツやシャツを脱がせ、ベルトコンベアに乗せて真空パックする。それらは都市の自動販売機に並べられる。それをアジア人女性が購入し、パックを開けて匂いを嗅ぎ、恍惚となる。それが「So riecht das Fruhjahr.(これが春の香り)」だというのだ。

要は、白人男の使用済みパンツを嗅いでアジア人の女が恍惚、といったCMが白昼堂々と流されているのだ。

これは、アジアの女は白人男が声をかければひょいひょいついてくる(やり放題)という都市伝説とも通底する。

吐き気モノ。

抗議を受けた企業側は、ヘイト企業の定番通り、「我が社には、性別、年齢を問わず、様々なルーツで様々な宗教の社員、身体に障害のある社員も在籍しており、当社は差別を支持していません」「我々は多様性を支持し、相互に尊重することを歓迎している」といった釈明を繰り返した。

挙句の果てには、「(日本で)男性が若い女性の中古の下着を買っている(ブルセラのことらしい)という都市伝説を、性別を逆にして表現したのだ」とまで開き直る始末。

ドイツでも抗議活動が盛り上がっているが、アジアでは韓国などがすぐに反発を示した。

ところが日本では、なぜかこれらの抗議活動を揶揄することで存在感を出そうとする、本末転倒な流れが出てきた。

とにかくまず嫌韓嫌中なので、彼らと同調したくないということなのだろう。

ダメすぎる。

白人男の女性差別・アジア人差別CMを支持する日本人ネトウヨの劣等感は、もはや複雑骨折状態。目も当てられない。

余談だが、ドイツのシュレーダー元首相も、五回目の結婚の相手は韓国人女性だった。

五回って、やっぱ反省してない証拠だよな。

 

写真:
ドイツで放送されたCMの1シーン。
男のパンツを嗅いで、喜ぶ女性の姿

 

(マスコミ市民’19年5月号より転載)

執筆者プロフィール

辛淑玉
辛淑玉
1959年東京生まれ。在日三世。
人材育成技術研究所所長。
企業内研修、インストラクターの養成 などを行うかたわら、テレビ出演、執筆、 講演も多数こなす。
2003年に第15回多 田謡子反権力人権賞受賞。2013年エイボン女性賞受賞。
著書に、『怒りの方法』『悪あがきのすすめ』(ともに岩波新書)、『差別と日本人』(角 川テーマ21)、『せっちゃんのごちそう』(NHK出版)など多数。

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