愛はどこに

安倍劇場では忠誠合戦が花盛りである。

権力者に恥ずかしげもなくシッポを振る姿を、こんなに次々と見られる機会はめったにないだろう。

寵愛の序列もよく変わる。

自称ジャーナリストの櫻井よしこは、もう終わった感満載。山谷えり子は場外だし、必死にしがみついているのは稲田朋美と片山さつき、高市早苗ぐらいか。しかも、多分賞味期限は切れている。もう、杉田水脈に取って代わられたという印象だ。

そこに「私もいるわよ!」と打って出たのが、15人もの死刑を執行した上川陽子法相(当時)。処刑前の宴席では女将役までやってのけた。

もちろん、男たちだって負けていはいない。

官僚は安倍の国会答弁に合わせた嘘データの作成に奔走し、政権にとって都合の悪い公文書は改ざんするか廃棄し、自殺者が出ても、証人喚問で嘘をついても、安倍をお守りし続けた。

消費税特権を手放したくないマスコミ各社は提灯記事を書き続け、テレビは政権批判をする人たちをワイドショーという枠の中でシラミ潰しに吊し上げ、隣国への誹謗中傷に精を出しては、安倍に「ボクを見て!」コールを連発している。

古参のサンケイは、捨てられまいとフェイクニュースによる扇動を繰り返した結果、取材能力をなくして久しい。いまや、ネトウヨのガセネタを記事にする体たらく。

サンケイがいるから多少まともに見える読売は、ネトウヨ紙の頂点を独走状態である。さすが正力のプライベート紙。国民を騙すことに心の痛みはない。

百田に至っては、安倍に愛されることだけを求めて吠え続けている狆(チン)。番犬には到底なれないコピペの人生だ。

そして安倍は、こうした無能な輩が可愛くて仕方がないのだ。なぜなら、自分が無能だから。

共産党の志位和夫とか小池晃といった知的エリート議員は間違いなく安倍の天敵だろう。バカでも入れるのが自民党、勉強しないと入れないのが共産党なのだから。

ネットの世界では、安倍支持に間違いないツイッターJapanが、レイシストのアカウントはいくらヘイトを垂れ流しても消さないのに、政権批判を含むカウンター側のアカウントは次々と凍結している。

紀伊国屋書店の百田本コーナーなど、尻尾を振りすぎてちぎれてしまったようなもの。きっと、安倍政権が永遠に続くと思ってるんだろうなぁ。

これから株価が暴落して経済破綻が明らかになったら、安倍シッポ組は雪崩を打って「騙されていた」とか被害者ヅラするのだろう。その先陣を切るのは、きっと三浦瑠麗や古市憲寿のようなお調子者たちだ。

で、当の安倍は、アメリカに忠誠を尽くそうと「日本国」を売り飛ばし続けている。使えもしない高価な武器を買うだけでなく、種子法廃止や水道民営化など、人々の生存を脅かす法案の可決はみな献上品そのものだ。見事な植民地行政官である。

しかし、その安倍への対抗勢力として自称リベラルがすがったのが「天皇」というのだから情けない。

昨年末の「お言葉」があちこちで持ち上げられているが、一体あれのどこをどう読めば「沖縄を思う天皇」なんて解釈が出てくるのだろうか。オレの顔に免じて沖縄は我慢してくれ、祈ってやってるから、と言っているだけじゃないか。

戦犯としての処刑を免れるため、昭和天皇はアメリカに沖縄を献上し、ソ連への対抗策として作られた『日本国憲法』という奇策のおかげで生き延びた。天皇家が護憲一筋なのは「お家」を守るためであり、護憲発言は米国への忠誠を誓うメッセージなのだ。

特攻隊に出撃命令を出したという点一つとっても、最高責任者として命乞いなどありえない。でも、裕仁はそれをした。そして、マッカーサーと並んで写真を撮り、「いい人」であるかのようなガセネタを垂れ流し、人間宣言とかをして全国を巡業し、米国の統治に貢献したのだ。

命が惜しいから。お家を守りたいから。

天皇が裁かれなかった結果、帝国日本と皇軍の罪はうやむやにされた。このおかげで生き永らえた戦争犯罪者どもがどれほどいたことか。

一方で、岸家もお家を守り国家を私物化するために全力で動いている。そう、いま起きているのは、米国の傘の下でのお家騒動なのだ。

結局、みんなアメリカに愛されたいんだね。

 

写真:クロアチアの海で

 

(マスコミ市民’19年2月号より転載)

執筆者プロフィール

辛淑玉
辛淑玉
1959年東京生まれ。在日三世。
人材育成技術研究所所長。
企業内研修、インストラクターの養成 などを行うかたわら、テレビ出演、執筆、 講演も多数こなす。
2003年に第15回多 田謡子反権力人権賞受賞。2013年エイボン女性賞受賞。
著書に、『怒りの方法』『悪あがきのすすめ』(ともに岩波新書)、『差別と日本人』(角 川テーマ21)、『せっちゃんのごちそう』(NHK出版)など多数。

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