コンビニでコーヒー(100円)のカップにカフェラテ(150円)を注いだ人が逮捕・勾留されたというニュースを聞いて、涙が止まらなかった。そんなことをニュースとして流すマスコミ人も、人間としてどうかと思う。
イタリアでは、『飢えに耐えかねて食べ物を盗むことは犯罪には当たらない』という最高裁判決が出て久しい。貧しさは努力でどうにかなるものではないのだ。
わずか50円の盗みを糾弾する社会は、お上の犯罪には寛容だ。甘利をはじめ、数百万、1千万の賄賂を受け取った大臣たちはすべてお咎めなし。アベトモに8億以上の不当値引きをした関係者もお咎めなし。もちろん、主犯の安倍もお咎めなし。いまでは森羅万象すべてを担当していると口にするほど万能感にあふれている。
年金を与えず70歳まで働かせろという社会で、生きることの意味を問うこと自体が間違っているのだろう。「子どもを作らないのは無責任」と言いながら、この国の政治は、子どもを産んで育てていける環境を作ろうとはしない。
力のある者は罪を問われないとでもいうように、アベ友なら性犯罪を犯しても逮捕すらされず、警官が五人で集団暴行しても「証拠不十分」で不起訴。金持ちの親を持つ慶応大生なら、強姦の常習犯でも在籍し続けられるし起訴もされない。
しかし、考えてみれば、先の大戦の戦争責任すら追求していないのだから、権力者・責任者を裁くという発想自体がこの国にはないのだろう。
日露戦争時の脚気による大量死のような明らかな失敗でも、責任者が裁かれることはなかった。当の責任者の森鴎外(陸軍医務局長)が調査会の会長となって「問題なし」の結論を出して終わり。検証が難しいほどの大失敗なら、いつまでたっても検証などしない。
すべてを精神論で片付けて、嘘だらけの「神聖なる歴史」が作られる。そんな妄想の歴史の中で生きる日本は、社会の劣化が凄まじい勢いで進んでいる。
いま、韓国の文在寅大統領に対して、日本の政治家や官僚たちは「日韓の国益を損ねる」と口汚く非難している。韓国で民主主義が確立すれば植民地時代から続く日韓既得権益層の利権が危うくなるし、沖縄が県民投票で民意を固めれば日米の軍事利権構造が危うくなる。韓国や沖縄が民主主義を求めることは日本の「国益」にはならないと、日本の官僚も政治家も言い続けているのだ。
もっと平たく言えば、米国に屈従する状況に追い込まれているというのに、オレより下にいる奴らが「オレ様」に逆らうことは許さないということであり、「韓国や朝鮮、沖縄にまでバカにされたくない」という、くそオヤジ的発想なのだ。
思い起こせば、帝国日本は、いつも朝鮮を「女」のように、教え導かなければならないものとして扱ってきた。その「女」が、自立して口答えしてくるから許せないのだろう。
で、なりふり構わず、自分の力の確認作業をしている。「立派で強いオレに逆らうな」と。哀れなDV男の末路だ。
アメリカの手前、いまは北朝鮮を叩けないし、中国は怖すぎる。いま安心して叩けるのは韓国だけだが、やがてそのネタも尽きたら、今度は間違いなく国内の敵を探し始める。そのとき、日本という井戸の中の蛙として生きることを強いられてきた「在日」は、格好の餌食にされるだろう。
しかし、従順な在日でも生き延びられなくなれば、その次は従順な日本人も生き延びられなくなるのだ。歴史は繰り返す。
五〇円で逮捕勾留されるのは、次はあなただ。
写真:
中国人芸術家アイウェイウェイの作品
獄中にとらわれた時の状況をミニチュアで再現。しかも、のぞきまでからでしか見ることができない。
ドイツにて
(マスコミ市民’19年4月号より転載)
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