KAT-TUNの元メンバー・田口淳之介(33)が、大麻を所持していたとして逮捕され、先日保釈された。そして、マスコミの前で「金輪際、薬物、犯罪に手を染めないことを誓います」「しばらく芸能活動は休止します」と叫ぶように言って土下座した。
その映像が様々に加工され、「お笑い」のネタとしてツイッターで拡散されているのを見て、嫌な気持ちになった。
法的ルールは力あるものに優位に働き、社会的制裁も、反論できない立場の者には、よりきつくなる。
父親に強姦された娘が告訴しても父親は無罪となり、政治家が子どもを産む数にまで口を出し、女がハイヒールをやめることすら男の許可が要る社会って、なんなのだろうか。
イギリスでは先月、バスの中でビアンの女性二人が男四人に「キスしてみせろ」と強要され、拒否したら暴行を受けた。血だらけの顔写真が報道されたとき、13年には同性婚が認められているのに、被抑圧者はどこまでも闘わないと生きていけないのだなぁと、ため息がこぼれた。
ヘテロの男社会は、ビアンに対してより厳しく当たる。テレビを見ても、ゲイまでは許容する芸能界もビアンを登場させるところまではいかない。そこには、「男同士はまだ許せるが、男を排除した女同士は許さない」というメッセージが含まれている。
だから、かつてビアンと噂が流れた芸能人は干された。ビアンは今でもスキャンダルなのだ。
吉本興業の芸人(カラテカ・入江慎也)が、振り込め詐欺グループの忘年会に他の芸人を誘って闇営業(所属事務所を通さない営業)をしたという理由で解雇された。解雇は入江だけで、誘われて参加した他の芸人は厳重注意処分だったという。
いま、日本のテレビは、面白くない芸人が司会をするなど、本来の芸以外の分野まで低価格の吉本芸人が溢れている。
日本の笑いは権力を批判するものではなく、妬み、そねみ、いじめの繰り返しばかりだ。当然ネタは尽きる。いくら番組の数があっても、マンネリ化して淘汰されるのは目に見えている。
闇営業は、私が知る限り、芸能事務所にいてトップタレントでなければ、ほとんどの人がしていた。事務所はそこまで仕事を持ってこないし、生活の面倒を見ることもないからだ。その上、どこからを闇営業というのか、線引きも難しい。友人に頼まれて顔出ししてお礼をもらったら闇だと言われたら、おそらく全芸人が謹慎処分だろう。
振り込め詐欺といえば、政府はなんと年金受給を80歳からにしようと言い出した、年金保険料を取るだけ取って払わないというのだから、まさに振り込め詐欺ではないか。この国では反社会勢力が政権を握っているのだ。 その安倍に呼ばれて首相公邸でヨイショ芸をやった吉本芸人たちはお咎めなし。そして、「衆参同日選あんのかい~」まで言わせている。
オーストラリアでは、ニュージーランドのモスク襲撃事件の後、イスラム教徒に対してヘイトスピーチをした極右議員にタマゴをぶつけた高校生が無罪放免となり、裁判費用にと寄せられたお金を、少年は襲撃事件被害者のために全額寄付した。かっこいい少年だ。彼を無罪放免した司法も真っ当だし、高校生を支えようとした市民もまた、「正義」とは何かの基準が明確だった。
残念ながら、日本には『長いものには巻かれろ』以外の正義は無いようだ。
歴代自民党政権が米国に媚びてシッポを振り、公明党がその自民党に媚び、その後ろには、維新、幸福実現党、NHKから国民を守る党、日本第一党と言ったレイシストたちの党が続く。その下に、マスコミ、労働組合、コメンテーター、芸能人が続く。
そう、彼らは、「正義」は力あるものが決めるのだと、その行動で示しているのだ。きっと、そう遠くない将来「原発の放射能は体に良い」とか言い出すだろう。
そして最後は、「オレたちは騙されていたんだぁー」と責任逃れをして逃げるのだろう。
元KAT-TUNの田口が土下座したとき、「そんなことはやめなさい」と言う大人は一人もいなかった。
写真:
田口の土下座シーン、豊田商事の殺害シーンも多くの報道陣の前で行われた。
誰も止めることがなかった。
(マスコミ市民’19年7月号より転載)
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