Salt20 – 主役はピアノ

ノーベル賞は、記念コンサートがあります。世界100カ国に中継されているのですが、日本では放映されません。

ある意味では、オリンピックの閉会式とか、グラミー賞ぐらいの、言葉は適当じゃないですが、「派手」な演出もある、テレビ・コンテンツとしても、なかなか人気のものです。

さて、昨年のノーベル平和賞記念コンサートの一コマです。

 

なんとジョン・レジェンドが、スウェーデンのザラ・ラーソンと、「世界で最も美しい歌」と言われる、ビーチ・ボーイズの「ゴッド・オンリー・ノーズ」を歌っています。

 

主役はこのピアノです。

爆心地から3キロ、当時の地名では宇品町、今は、広島市安佐南区です。1938年に日本楽器製造(YAMAHA)によって作られました。

今の所有者は、矢川光則さん。被曝二世のピアノ調律師さんです。

矢川さんのお父さんは、爆心地近くで被爆しましたが、あまりにもそれが悲惨で、「原爆」そのものについては、口を閉ざしたままだった。

たまたま、20年前、思いだすのも辛い被爆体験を、このピアノが語り継いでくれるかも、とピアノ修理も行っていた矢川さんのもとに、一台のピアノが持ち込まれました。

「おそらく直接、原爆のことを口にできない被爆者も多いだろう、またこれから亡くなって行く人も多いだろう、ならば、被曝二世であり、ピアノ修理者としての自分としての道はこれではないか」と矢川さんは考えた。

以来、矢川さんの元に託されたピアノは、6台。
年100回ほどの公演が、これらのピアノによって開かれています。

核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN)が受賞した今回のノーベル平和賞。

もっとも、相応しいコンサートとなったかもしれません。

こちらは、ノーベル賞式典。ジョン・レジェンドがボブ・マーリーの、最後のアルバム
“Uprising(日本語タイトル 「蜂起!」)のなかの、’Redemption Song(邦題「解放の歌」’を歌ってます。

 

画像は、Bob Marrlly & The Wailersの”Uprising”

執筆者プロフィール

友岡雅弥
友岡雅弥大阪大学文学部博士課程単位取得退学(インド哲学専攻)
高校生時代から、ハンセン病、被差別部落、在日、沖縄、障がい者、野宿生活者など、さまざまな「社会の片隅で息をひそめて暮らす人々」の日常生活のお手伝いを。

2011年3月11日以降、東北太平洋沿岸被災地に通う。

大学院時代は、自宅を音楽スタジオに改装。音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J -Pop以外はなんでも聴く。

沖縄専門のFM番組に数度ゲスト出演をし、DJとして八重山民謡を紹介。友人と協力し、宮川左近シヨウや芙蓉軒麗花など、かつて一世を風靡した浪曲のCD復刻も行ったことも。

プロフィル画像は、福島県で三つ目の原発が計画されていた場所だったが、現地の人たちの粘り強い活動で、計画を中止させた浪江町の棚塩。津波で壊滅し、今は、浪江町の「震災ガレキ」の集積場・減容化施設が建設されている。

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