名著を読む23 – アンドレ・レノレ『出る杭は打たれる フランス人労働司祭の日本人論』(岩波現代文庫)を読む。

◇ ルポルタージュを読む意味

 工場にもどると、村本さんは工場長にしかられた。
 「オレはここで働いて二十年になるが、休みをとらなきゃならんようなケガなんか、一度だってしたことがないぞ。ケガはおまえの注意不足のせいだ。」
 村本さんはだまってあやまるばかりだし、工場長はいい気になってほざく。わたしはがまんできなくなって、有名な日本の諺を引用してやった。
 「猿も木から落ちる。あなたも注意した方がいいですよ。」
 わたしは事故にあわないようにお祈りをすることはあるが、お祈りそのものに事故をふせぐ力があると思ったことはない。それでも、できあがった建物を十トントラック四、五台のうえにのせて現場まではこぶというときには、積みこみの仕事が無事におわりますようにと一心にお祈りしたことが何度かある。じっさい、これははじめから最後まで緊張をしいられるような仕事である。
(出典)アンドレ・レノレ(花田昌宣、斉藤悦則訳)『出る杭は打たれる フランス人労働司祭の日本人論』岩波現代文庫、2002年、100-101頁。

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