哲学入門52 – ウジケさんと子どもと哲学(4) 自分自身で考えてみる(1)

〔子ども向け本文〕

・人間とは考える葦(あし)である
 さて、身近な物事に注目し、そこでいろいろな発見があったと思います。次に大切になってくる手続きとは一体何でしょうか?
 それは「自分自身で考える」ということです。
 古代中国の哲学者に孔子(こうし)(*1)という人物がいますが、『論語』(ろんご)という書物のなかで「学びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し」という言葉を残しております。この言葉は、いくら他人の話を聞いたり、書物を読んでも、自分自身で考えないのであれば、本当に理解することはできないという意味です。
 カント(*2)という近代ドイツの哲学者は、『啓蒙(けいもう)とは何か』という書物のなかで、自分自身で「知る勇気をもて」、「自分の理性を使う勇気をもて」と述べています。どちらの言葉も、自分自身で考えることの大切さを説いたものです。
 啓蒙とは難しい言葉ですが、正しい知識を身につけることによって、私たちが世界や人間に対するものの見方を新たにしていく営みとでも言えばいいでしょうか。知ることとは、単にその名前を覚えるということに尽きません。人間は何かを知り、それを深く理解することによって人間として成長していくものです。
 このことは、学校の勉強を振り返ってみても同じですよね。いくら先生の話を聞いても、教科書を読んでも、それを自分の頭のなかで改めて吟味したり、咀嚼(そしゃく)してみなければ、自分のものにはなりませんよね。咀嚼というのは、ご飯を食べるときに、歯でよくかみ、ゆっくりと時間をかけて食物を食べることです。食べるとは単に、食べ物を体のなかへ送り込むのではありません。味覚だけでなく、視覚や聴覚、触覚など五感で味わうことではじめて美味しさが理解できたり、きちんと栄養を摂取することができます。これは勉強や物事を理解することでも同じです。
 17世紀のフランスにパスカル(*3)という思想家がいました。自然科学から文学にいたるまで幅広く世界と人間を探求した偉大な人物ですが、彼は次のような言葉を残しております。則ち、

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