最近興味深く読み終えたのが、デイヴィッド・フィッシュマン(羽田詩津子訳)『ナチスから図書館を守った人たち 囚われの司書、詩人、学者の闘い』(原書房、2019年)である。ナチスはユダヤ人迫害を正当化するために、ヨーロッパ全土のユダヤ人から書物を始めトーラーにいたるまで文化的財産を略奪としたという。ドイツ国内の研究図書館へ送られるものはごくわずかで、大半が処分され、神聖なトーラーの巻物は、ドイツ軍人の革靴に再利用されたという。
本書は、ポーランド領ヴィルナで、自らの文化を守り続けたユダヤ人たちの闘いの記録である。通称「紙部隊」--。ナチスに迫害されたユダヤ人たちが、ユダヤ民族の文化を守り、次世代に継承していこうとして命懸けで奮闘する姿を描いた良質のノンフィクションである。関心のある方はぜひ紐解いてほしい。