Lwp110 – 書評:アミン・マアルーフ(小野正嗣訳)『アイデンティティが人を殺す』ちくま学芸文庫、2019年。

集団への帰属欲求が、なぜ、異なる他者に対する恐怖や殺戮へと易々とつながってしまうのか? 著者は、レバノンに生まれ、フランスで長年生活している作家が「アイデンティティ」という言葉について考えをめぐらせたのが本書である。母語 …

Lwp108 – 書評:角田光代ほか『もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた』(河出書房新社、2019年)。

NHKの人気番組「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」が書籍化されたのが本書「もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた」である。角田光代ほか吉田修一、村山由佳、柚月裕子、保坂和志、養老孟司ら6人の人気著作家と個性あふれる愛猫 …

Lwp107 – 偶像崇拝こそリスペクトする対象を貶めてしまうのではないか

昨年刊行された、黒崎真『マーティン・ルーサー・キング』(岩波新書)は、最新のキング牧師の評伝である。人類が兄弟姉妹として共に生き、お互いの人格を尊重できる社会の創出を目指して闘い抜いた奇跡を振り返り、未来を展望する一書で …

Lwp105 – 読書によって人間は人間へとなり得るのではないか。

最近興味深く読み終えたのが、デイヴィッド・フィッシュマン(羽田詩津子訳)『ナチスから図書館を守った人たち 囚われの司書、詩人、学者の闘い』(原書房、2019年)である。ナチスはユダヤ人迫害を正当化するために、ヨーロッパ全 …

Lwp104 – 書評:宇野重規『民主主義のつくり方』(ちくま書房、2013年)。

外交、安全保障、そして年金問題等など、政治への不信と無力感が深まっている。加えて制度としての政治(民主主義)もうまく機能していないのではないかと問い直されている。しかし、制度を容易に手放してしまうことには自戒的であるべき …

Lwp103 – 本音を愚痴るより建前にしがみつけ

仕事をしていると、「ウジケさんは、理想ばかり語って現実をみていない」という批判をよく受けますが、別に「理想ばかり語って現実をみていない」わけではありません。そうではなく、現実を開拓していくために「理想」という批判的視座が …