名著を読む19 – 夏目漱石『私の個人主義』を読む

◇ 漱石の問い  私はこの世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦(すく)んでしまったのです。そうしてどこからか一筋の日光 …

Lwp66 – 書評:鳥居『キリンの子 鳥居歌集』角川書店。【無料】

書物にはわざわざ解説するよりも、「とにかく読め」と言うほかないものが存在する。詩集や画集といった類がそれに該当するが、それでも、「とにかく読め」という妥当性を無理やりひねり出して、すなわち余分としか言う他ない「解説」とい …

哲学入門39 – コラム:他者に勝ることは果たして自身の安心立命になるのか=ニーチェ【無料】

哲学入門38 – 3.3 前史(9) ニーチェとニヒリズム(1) 前回の哲学本編では、ニーチェを取り上げ、その1として、寄る辺なき時代を生きる哲学としてニヒリズムの思想を概観した。ニヒリズムと聞けば、虚無主義 …

Lwp64 – 利己主義と利他主義は対立するものなのか

フランス・ドゥ・ヴァール(柴田裕之訳)『道徳性の起源』(紀伊國屋書店)は、人間に固有とされる道徳性とは、教育によるだけでなく、生物としての個体に潜在するものではないかと示唆する一冊で非常に興味深く読んだ。本書はボノボとチ …

哲学入門38 – 3.3 前史(9) ニーチェとニヒリズム(1)

(前回までのあらすじ) 前回の哲学入門では、ジェレミー・ベンサムとジョン・スチュアート・ミルを取り上げ、功利主義を紹介した。功利主義とは、社会全体の快楽の増大や苦痛の減少を基準にして、道徳や立法の判断をするべきだという考 …

Lwp63 – 書評:岩下明裕編『領土という病 国境ナショナリズムへの処方箋』北海道大学出版会。

領土問題は全て政治的に「構築(construct)」された産物である以上、それはどこまでもアポステリオリな事柄である。あるがままのそれをアプリオリと認識するひとは常に「領土の罠」に穽っている。本書はボーダースタディーズの …

ウジケ訊1 – 「個人と所属する共同体の関係はどうあるべきか」

【質問】 ハンドルネーム:チュンヒー 氏家先生 いつも興味深く先生の投稿を拝読しております。先生にご質問する機会が与えられましたので、先生のお考えをお聞きいたしたく質問させていただきます。どんな組織でも「一致団結して」「 …